インドネシア、バリ島アグン山

陸と海のつながりを取り戻すために

 

© Rudi Waisnawa

美しい砂浜とサンゴ礁、棚田、火山、そして豊かな文化。バリ島の魅力は世界中から多くの観光客を引き寄せ、観光は島の経済を発展させました。しかし、経済の変化は、森林の農地や市街地島への転換、水不足、土壌流出、ゴミの増加といった深刻な問題も生み出しています。

バリに古くから伝わる知恵の一つに「Nyegara Gunung」という言葉があります。英語では「Ridge to Reef」と訳され、陸と海はひとつながりであるという意味です。日本でも「森は海の恋人運動」で知られるように、森は豊かな海に欠かせない存在です。バリ島で進む森林の荒廃は、養分の流れを減らすだけでなく、流出した土壌がサンゴ礁を覆うことでも海に影響を与えています。森林の回復は、豊かな海を守るために不可欠です。 

バリ島で森林回復の必要性が特に高い地域の一つが、聖地アグン山の東斜面に位置するカランガセン県です。ここはバリ島の主要な水源地の一つであり、火山活動や伐採による森林の荒廃が深刻です。​

© Jeff Yonover

沿岸のトランベンは世界有数のダイビングスポットで、色とりどりの魚が生息するサンゴ礁に加え、第二次世界大戦の遺物である沈没船リバティ号が観光客を引きつけています。もしリバティ号周辺のサンゴ礁が陸から流出した土壌に覆われれば、サンゴ礁は死滅し、魚も姿を消し、観光業や漁業に大きな打撃がおよびます。トランベンには海洋保護区が設立されていますが、海だけの取り組みでは海を守ることはできません。 

陸と海はつながっています。バリの知恵である「Nyegara Gunung」が示す通り、陸と海をひとつの単位として統合的に管理することが必要です。プロジェクトでは、カランガセン県のアグン山の山腹と沿岸をつなぐ2つの村を対象に、上流域での森林再生、代替生計手段づくり、そして環境教育と普及啓発に取り組んでいます。