スーパーマーケットの棚に並ぶ製品の半数は、パーム油が使われています。サンドイッチ、チップス、クッキーなどの食品だけでなく、洗剤や歯磨き粉、さらには愛犬のごはんにも含まれているかもしれません。
アブラヤシから採れるパーム油は非常に汎用性が高く、生産効率も抜群です。1ヘクタールあたりの油生産量は、他の油作物の最大10倍にもなります。この需要は過去10年で倍以上に増加しており、何百万もの生産者に雇用を生み出してきました。
一方で、世界のパーム油の約85%が生産されるインドネシアとマレーシアでは、地域住民や野生生物にとって深刻な脅威も生じています。森林伐採や泥炭地の排水、パームヤシの植栽、地元住民との土地問題など、急速な産業成長に伴う課題が顕在化しています。
私たちの計画
パーム油そのものが悪いわけではありません。持続可能な方法で生産することは十分に可能です。しかし、現場ではパーム油生産に伴う問題が依然として残っています。私たちは、人びとと自然の両方に利益をもたらす解決策を広めるため、この課題に取り組んでいます。
サプライチェーンを変革する
- RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証に基づく調達戦略の策定
- 強固なトレーサビリティシステムの構築とデータ活用による、優先的サプライヤー・地域の特定
- サプライチェーンが自然に与える影響と依存度の評価、企業の「自然のための科学的目標(STBN)」設定支援
- 主要生産地域での持続可能な生産・保全・再生への投資と、地域利害関係者との協働による共同行動の促進
森林破壊ゼロからネイチャーポジティブへ
自然環境と気候変動に対する企業やサプライチェーンの迅速な対応が求められています。コンサベーション・インターナショナルは、企業が商品を調達する際に生じる自然への影響を評価し、それに応じた保全・再生・持続可能な生産の取り組みを支援しています。
パーム油だけでなく、大豆、牛製品、コーヒー、カカオ、ゴム、マグロ、エビなど、多様なコモディティ商品のサプライチェーンを対象に、複数の企業と連携して自然保護目標を設定。主要な生産地域での具体的な計画づくりを通じて、森林破壊ゼロからネイチャーポジティブな取り組みへと導いています。
この取り組みについて詳しく知りたい方は、こちら ※英語版PDF
生産ランドスケープの変革
森林減少や社会的対立の問題に取り組むためには、1社や1商品の努力だけでは不十分です。コンサベーション・インターナショナルは、ランドスケープレベルでの取り組みを支援しています。このアプローチでは、政府、企業、市民グループなどの関係者をつなぎ、共通の目標を設定。流域やエコリージョンなどの生態学的境界、あるいは地区や市町村などの行政区を対象に、保全・再生・持続可能な生産を促進する協働を行います。
南タパヌリ地区では、90,000ヘクタール以上にアブラヤシが植えられていますが、森林はまだ80%以上残っています。これらの森林は、地元住民の生活に不可欠であるだけでなく、気候や降雨の調整、洪水や地滑りの防止、スマトラトラやタパヌリオランウータンなどの希少種の生息地提供にも重要です。
コンサベーション・インターナショナルの現地パートナー、コンサバシ・インドネシア(Konservasi Indonesia)は、地方・州政府協力して森林管理と監視を強化。劣化地の再生や、社会林業プログラムを通じた合法性の回復、アグロフォレストリーによる生計改善の支援を行っています。また、南タパヌリの持続可能なパーム油フォーラム(FoKSBI)と緊密に連携し、パーム油セクター全体の協力体制を強化。独立した小規模農家が持続可能な生産方法を採用し、RSPO認証を通じて生産性向上と追加収入の獲得を目指すための直接支援も提供しています。
北アマゾン地域は、生産地、森林、先住民の土地が豊かに混在する地域です。地域のほぼ半分が先住民の領土で、68%が森林で覆われています。また、アブラヤシの生産が増加している一方で、カカオ、コーヒー、畜牛の生産も行われています。
コンサベーション・インターナショナル・エクアドルは、政府、企業、小規模生産者、市民グループなどと協力し、森林保護と生態系のつながりの改善を図りつつ、生産者の生計を支援する統合的な地域行動計画を実施しています。地元住民との保全協定を通じて、研修や持続可能な生産実践の導入を支援。これにより、アブラヤシや他作物の生産性向上、地元のパーム油会社によるプレミアム価格の獲得、政府の「ソシオ・ボスケ(Socio Bosque)」プログラムによる保全行動への支払いなど、インセンティブの活用を促進しています。さらに、北アマゾン地域は、RSPOを通じた行政区認証を達成するためのエクアドル国内での重要なパイロット地域にもなっています。
数字でみるパーム油
●アブラヤシは約30万平方キロメートルの面積で栽培されており、イタリアの国土面積に相当する。
●パーム油は非常に効率的な作物で、全植物油の40%を生産しながら、大豆や菜種など他の作物に使われる土地の10%未満で生産可能。
●世界で約700万人の小規模農家がアブラヤシを栽培している(RSPO
2022年)。
●パーム油の需要は2001年から2020年の間に2倍以上に増加。
●2000年以降の農園拡大は世界的な森林破壊を引き起こしており、2001年から2015年の間に推定10万5,000平方キロメートルの森林が改変、そのうち3万5,000平方キロメートルは原生林だった(WRI)。
政策の支援
政府は、持続可能なパーム油の推進において重要な役割を果たしています。コンサベーション・インターナショナルは、森林破壊や社会的対立に直接的または間接的に寄与しない、持続可能なパーム油生産を促進するため、地域・国家・国際レベルの政策イニシアチブを支援しています。
私たちは、政府の自然資源保全計画や意思決定に対して、科学的助言を提供しています。インドネシアでは、現地法人Konservasi Indonesiaと連携し、地元の生産者がインドネシアの持続可能なパーム油(ISPO)認証を取得できるよう支援するとともに、持続可能なパーム油フォーラム(FoKSBI)など、多様なステークホルダープラットフォームにも参加しています。エクアドルでは、コンサベーション・インターナショナル・エクアドルが政府と緊密に連携し、REDD+国家パーム油行動計画の実施を支援するとともに、RSPOの管轄認証のモデルを確立しています。さらに、政府間委員会(CISPS)や北アマゾン地域での森林破壊のないパーム油生産を推進する包括的テーブルなど、複数のステークホルダープラットフォームを通じて、共同の取り組みを支援しています。
近年では、輸入品のデューデリジェンス要件を強化し、森林破壊や人権問題に対する市場規制が増加しています。コンサベーション・インターナショナルは、森林破壊に対する説明責任を強化する取り組みを支援するとともに、政府に対して、小規模生産者の保護政策や生産国が遵守を達成するための財政支援を統合するよう奨励しています。
協働の促進
コンサベーション・インターナショナルは、パーム油のランドスケープレベルでの変革を支援するため、多様なステークホルダーイニシアチブに積極的に関与しています。
- 持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO):パーム油セクターの持続可能性を推進する最大の多様なステークホルダープラットフォームであり、持続可能なパーム油の生産と貿易のための主要な認証基準を維持している。
- 高炭素ストックアプローチ(HCSA):森林破壊のないコミットメントを実施するための方法論、ツール、およびガイダンスを提供する協力イニシアチブ。
- 持続可能な生計のための連合(CSL):政府、民間セクター、市民社会のステークホルダーを結集し、北スマトラ州およびアチェ州で農家の生計向上、持続可能な生産、保全、再生を支援する共同の取り組みと投資を推進する地域ベースのプラットフォーム。