REDD+(レッドプラス)

森林の減少・劣化に由来する排出の削減

 

現在、地球温暖化の主な原因である人為的温室効果ガスの排出量のうち、約11%は森林の消失に起因して大気中に放出されています。世界では毎年、日本の国土面積の約4割に相当する森林が失われています。途上国において森林破壊を抑制するには、従来の生計手段から新たな手段への移行が不可欠ですが、そのための資金が十分に確保されていません。

 

「森林減少・劣化に由来する排出の削減(Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation: REDD+:レッドプラス)」*は、気候変動枠組条約に基づき、途上国の森林から温室効果ガスの排出を減らすために設けられた国際的な仕組みです。REDD+の枠組みにより、森林を保全・回復する途上国は、先進国から資金支援を受けることができます。たとえば、地域コミュニティが森林開発を控えることで資金を得たり、既存農地の効率的活用による収量向上のための研修を受けたりすることが可能です。

*REDD+(レッドプラス)とは:森林の減少・劣化に起因する排出の削減に加えて、森林の炭素貯蓄量の保全、持続可能な森林経営、さらには炭素貯蔵量の増進を推進する仕組みです。

 

私たちの考え方と活動

コンサベーション・インターナショナル(CI)は、森林が失われるよりも維持される方が高い価値を持つ国際的な仕組み作りに取り組んでいます。途上国の現場では、地元のコミュニティや政府と連携し、REDD+プロジェクトを形成・実施することで、森林の保全と回復が効果的かつ効率的な気候変動緩和策であることを国際社会に示しています。これまでにアジア、南米、アフリカの国々で、合計37万ヘクタールにおよぶ熱帯林を保全してきました。さらに、現場で得られた教訓を政策形成の議論に活かし、REDD+活動の世界規模での拡大を支えています。

CIは、REDD+によって生まれる便益が地元の人びとに公平に配分され、先住民族を含む地域全体の理解と参加を得られる仕組み作りを重視しています。REDD+は単に温室効果ガスの排出削減のための仕組みではなく、生態系サービスを含む森林保全を通じて、さまざまな環境的・社会的便益を生み出す枠組みとして捉えることが重要です。実際、CIはREDD+プロジェクトによるコミュニティや生物多様性保全への便益を明確化するための国際基準作りに大きく貢献してきました。

現在、途上国ではREDD+の国家計画策定や実施能力を高めるための技術的・資金的支援が不足しています。そのため、CIは各国政府や地方自治体、コミュニティに対して、REDD+の実施計画の策定支援や技術・能力向上の支援を提供しています。

 

国際交渉の動き

REDDの議論は、2005年の気候変動枠組条約第11回締約国会議(COP11)において、パプア・ニューギニアとコスタリカが共同で提案した「発展途上国における森林破壊由来の排出の削減:行動を促す取り組み」から始まりました。2007年のCOP13(インドネシア・バリ)では、途上国の森林減少・劣化による排出削減(REDD)が、京都議定書第一約束期間後の国際的気候変動対策の重要課題であることが確認されました。さらに、森林破壊や劣化の抑制に加え、保全効果や持続可能な森林経営、炭素吸収量の増加など生態系機能の向上を目指す取り組みが、「REDD+」として提唱され、CIも日本を含む各国事務所を通じて、REDD+が国際的枠組みとして認められるよう後押ししました。

2010年のCOP16(にメキシコ・カンクン)では、REDD+プロジェクト実施時に配慮すべきセーフガード(先住民への配慮や生物多様性保全など)が合意されました。2013年のCOP19(ポーランド・ワルシャワ)では、「REDD+のためのワルシャワ枠組み」に合意し、森林モニタリングや温室効果ガスの測定・報告・検証(MRV)、成果に基づく支払いなど、REDD+を進めるための基本ルールが整備されました。2014年のCOP20(ペルー・リマ)では交渉面での進展は限定的でしたが、各国のREDD+情報を公開する「情報ハブ」が開設され、透明性が向上しました。

ワルシャワ枠組みを通じて、REDD+を実施するための体制は大きく整いました。途上国は、2020年まで、そして2020年以降の新たな枠組みでも、REDD+による排出削減量を自国の削減目標達成に利用することが期待されています。一方、REDD+による排出削減量をクレジット化して市場メカニズムに利用することについては、国際的合意がまだなく、今後の交渉に委ねられています。

CIは、REDD+が気候変動緩和策として有効であるだけでなく、社会、経済、生物多様性保全においても相乗効果を生み出す仕組みであると考えています。また、REDD+の活動をさらに拡大するためには、市場メカニズムの活用が効果的だと考えています。