カリフォルニア植物相地域
カリフォルニアの植物相地域は、地中海性気候帯で、植物の固有種が多いのが特徴です。このホットスポットには、地球最大の生物であるジャイアントセコイアや、世界一背の高い(ジャイアントセコイアより細身の)セコイア(セコイアオスギ)が生息しています。
またこの地域は、ジャイアントカンガルーラットや砂漠のサラマンダー、カリフォルニアコンドルなど、数々の絶滅危機に瀕した生物種が生息すると同時に、アメリカで最大の鳥類の繁殖地になっています。
しかしながら、商業的農業(機械化された農業)による自然破壊が、アメリカ人が消費する農産物の半分を生産するカリフォルニアの植物相地域に大きな脅威を与えています。これに加え、都市の拡大や環境汚染、道路建設がさらなる拍車をかけています。
概説
カリフォルニア植物相は、世界で五つの地中海性気候の場所(その全てがホットスポットのリストにあげられています。)の一つであり、夏は乾燥し暑く、冬は雨が多いことが特徴です。この地域は、ヤマヨモギ(sagebrush steppe)、ウチワサボテン(prickly pear)の灌木地、沿岸セージ低木、シャパラル(chaparral:カリフォルニアの暑く乾燥した夏と冷たく湿った冬に対応した、常緑の低木から成る生物群系)、ジェニパーの森(ヒノキ科ビャクシン属の総称)、高地・低山植生林―亜高山林、高山森林、河畔林、ヒノキの森、常緑樹の混交林、ダグラスファーの森(Douglas fir)、セコイアの森、レッドウッドの森、海岸砂丘、塩湿地など、幅広い生態系を含んでいます。現在、自然植生の24.7%、面積にして約8万㎢が手付かずに近い状態で残っています。
カリブ海諸島
カリブ海の島々は、山々のうっそうと茂る森林から森林伐採と侵食によって荒廃したサボテンの低木地帯まで、非常に多様な生態系が見られます。
ホットスポットには、12種の絶滅危惧種が生息しており、ソレンドン(大ネズミ)2種とキューバワニなどが含まれています。また、小型動物た多く生息することでも珍しく、世界最小の鳥であるタイニー・ビー・ハミングバード(マメハチドリ)や、世界最小のヘビが生息しています。
概説
カリブ海諸島のホットスポットは主に北米と南米の間に位置する島を大きく3つに分けたグループ: バハマ、小アンティル諸島、および大アンティル諸島(プエルトリコ、ジャマイカ、キューバ、およびドミニカ共和国とハイチを含めたイスパニョーラ島)から成っています。カリブ海諸国(時々西インド諸島と呼ばれる)は、政治的には、12の独立国家とフランス、イギリス、米国、オランダそれぞれの植民地から構成されています。 ホットスポットは400万km²以上の海洋と、キューバ、イルパニョーラ島、ジャマイカ、プエルトリコの4つの島が約90パーセントを占める、およそ23万km²の土地をカバーしています。
カリブ海諸島は海抜3,000m以上の高所(以前は氷河の頂だったピコ・ドゥアルテ)から、海抜マイナス40mの砂漠地帯まで及んでいます。 低い島々は半乾燥傾向にあり、そのほとんどが、バーブーダ、ジャマイカ、プエルトリコ各地(低地域で平均雨量が年間、300-600ミリしかない場所)のサバンナ、サボテンや低木の茂る半砂漠、灌木地帯に生育する、乾燥した常緑樹の叢林や雑木林に覆われています。
一方、湿地環境は、貿易風がカリブ海諸国にそびえる山々にぶつかる場所で発生し、沼地の森林、季節林、山林、および高山矯林を含む、様々なタイプの熱帯湿林を育んでいます。干潟や河口の周辺など、より湿度の高い地域では、永久汽水や淡水氾濫原が大規模なマングローブ林に影響を及ぼしています。
マドレア高木森林
バハ・カリフォルニア山脈とアメリカ合衆国南部に囲まれた、険しい山岳地帯や高い起伏、深い渓谷からなるホットスポットです。メキシコ全体の植物種の4分の1が生息しており、そのほとんどがここでしか見ることができません。ミチョアンカンにあるマツの森は、毎年大移動を行う何百万匹ものオオカバマダガ蝶の越冬地として有名です。
残念なことに、松の過剰伐採による、森林破壊が、この地域の生息環境破壊の主な原因となっています。
概説
マドレア高木森林のホットスポットは、東西にシエラマドレ山脈、メキシコ横断火山帯、南部山岳地域、オアハカ州北部山岳地域といった、メキシコの主要な山脈と、そこから離れたところにある、バハ・カルフォルニア半島(シエラ・デ・ラ・ラグーナ周辺)の山頂を含んでいます。 ホットスポットの大部分の461,265 km²の地域はメキシコ内にありますが、アメリカ合衆国の南部(南部アリゾナとニューメキシコにかけて、約40もの山が連なっているため、マドレアのスカイアイランドとして表現されています。)
マドレア高木森林は、ゴツゴツと岩が多く、高くそびえ立った山々に、深く険しい峡谷に囲まれていることから、地理的に複雑な歴史があったことをうかがい知る事ができます。メキシコ横断火山帯は西から、メキシコ中央部を抜け東へ走っており、シエラマドレ山脈を東西につなぎ、標高5,747 mのピコ・デ・オリザバ(Pico de Orizaba)と、同5,452mのポポカテペッティ(Popocatépetl)と並び、ホットスポットの中で、最も標高が高い山としても知られています。ホットスポットの気候は主に温暖ですが、傾斜と方位にかなり影響を受けて、年間降雨量は500mm~2,500mmと、ばらつきがあります。
マツとオークの森林はホットスポットの中で特有の植生タイプで、マツ(Pinus)あるいはモミ(Abies)どちらか単一樹種から、ほぼ純林のオーク(Quercus)まで、様々です。この2つの極めて異なる地域の間に、ある種が他の種より優位を保ちながら、様々な種が交じり合っています。例えばマツとオークの森林地帯は、広大な植物相(一般的に熱帯で乾燥している)に囲まれているおかげで、内陸に分布しています。この特徴は、特にメキシコ高地北部とマドレアのスカイアイランド諸島で見ることができます。
中央アメリカ
中央アメリカの森林は、世界のホットスポットの中で3番目の広さを誇ります。幸運を呼ぶといわれるケツァールやホエザルなど、特徴的な固有種が多く、17000種に及ぶ植物が生息するほか、多くの渡り鳥にとっての重要な生息環境を提供しています。この地域の低山帯林は、現地固有の両生類にとって重要な生息環境ですが、その多くが生息地破壊、病害、気候変動などの影響を受けています
概観
中央アメリカのホットスポットは、中米のほぼ全土にまたがって、メキシコ中央部からパナマ運河までの全ての亜熱帯と熱帯の生態系システムを含んでいます。 これはグアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、およびコスタリカの全土とメキシコの3分の一、パナマのほぼ三分の二も含んでいます。メキシコのホットスポットは、北は太平洋岸のシナロア(Río Fuerte)までと、メキシコ湾のシエアラマドレ山脈 (Tampicoの西)の中央部まで広がっています。また、チアパス、ユカタン、キンタナロー、タバスコ、カンペチェ、ベラクルス各州全域と、オアハカ、ゲレーロ、プエブラ、メヒコ、ミチョアカン、モレロス、ケレタロー、ハリスコ、ナヤリト、コリマ、グアナハト、サンルイスポトシ、ザカテカス、シナロア、ドゥランゴ、ソノラ、チワワ、タマウリパス各州の一部を含んでいます。なお、標高の高いシエラマドレ山脈の亜熱帯のマツ・オーク林はマドレア高木森林・ホットスポットに入っています。
また、このホットスポットには、カリブ海と太平洋の沿岸あるいは沖合いの数々の島を含んでいますが、ここは固有種が生息し、海鳥の巣があるなど、生物学的に重要な地域です。この島々には、レビジャヒヘド諸島、トレス・マリアス諸島、西カリブ諸島:コズメル(いずれもメキシコ領内)、バイア島(ホンジュラス)、ココス島(コスタリカ)プロビデンシア島とサン・アンドレス島(コロンビア)、コイバ島(パナマ)、クリッパートン島(フランス)が含まれています。
このホットスポットの生態系の特徴として、乾燥林、低地湿地林、山地林がモザイク状に複雑に交じり合っています。メキシコからパナマにかけた太平洋岸沿いに断続的に続く沿岸の沼地とマングローブ林は、標高が高くなるにつれ、広葉樹と針葉樹林に取って代わっていきます。山々の東側、カリブ海の低地は湿度があり、亜熱帯湿地林や熱帯雨林が生い茂っています。また、ホットスポットの南側には、広葉樹林や山地性の硬葉樹林が、雲に覆われた、険しい傾斜地を覆っています。